ペンション・モーツァルト日記

山中湖畔・平野の森の入り口にある“ペンション・モーツァルト”の日記です。

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サハラ砂漠紀行 ⅩⅡ  二重螺旋の秘密

昔むかし、あるところ…、サハラに渡るために、南イタリアの名も知れない小さな村を訪れた時のことです。とても不思議な事に出会いました。

もう、一日もいれば、その村の家の数さえ数えられそうな小さな村でした。すみれ色の夕靄に包まれて、ニセアカシヤやミモザの花の香りが一日の安息を人々に与える頃です。異邦の地の独り身ゆえに人恋しさがつのります。宿の主人に尋ねると、人の集まるにぎやかなところがあるといのです。

エニシダの垣根が続く小高い丘を降りていくと、時まさに眼下の地中海のチュニジアンブルーのみなもが落日に、かのヘルダーリンが歌ったアポロンの古代金に染め上げられていました。

‘アァ!あの黄金のさざ波うつネプチューンの王衣の向こうに憧れの地があるのだ’とそのまぶしさに目がくらみました。金色に発光する海の彼方から、たしかにカルタゴの海を埋め尽くす大船団と共に偉大なサハラの風が吹いてきました。

サハラの薫りに我を失い時を忘れたしばしのち、黄金海が夕闇のなかに過日の栄えのごとく消えゆくと共にその幻も消え去り、行く手に一つ二つほの暗い明りが見えてきました。生い茂った木々の枝のシルエットの向こうがほの明るく、かすかに人の気配が漂います。

小さな丸い広場でした。数十人の人がいるようでした。しかし実に奇妙な集まりです。人々が輪になって歩くでもなく歩いています、しかも二重に。内側の輪の人は時計回りに、外側の輪の人は反対回りに、一言二言の挨拶が、水紋がみなもを伝わるように廻っています。

それは、まったく理解できない光景でした。
古代バラモン僧が永遠のために捧げる、千年止むことのない勤行のようでした。人々は一人一人出会う毎に、軽く会釈するのですが、挨拶の言葉は聞き取れぬほど秘めやかです。まるで、口から出た言葉が相手をその勢いで壊しかねないのを危ぶむごとくなのです。そして、輪はただ回りつづけます。

彼らは、一体なにをしているのか、盆踊りでもなく…。人ごとながら、結末のない劇を見ているようで、わけもなく焦燥感がつのります。

しかし、やがて夜が更けると共に私は感じてきたのです、夜の闇が、果実が色づくように色づき熟れた香りを放ちはじめるのを。目に見えなくとも、その場は潮の高まるように何かの熱気を孕みつつありました。

人一人がそこに在る時、私たちはただたたずむ人をも幻とは思わず、確かにそこにいると感じます。それは、目に見えず耳に聞こえなくとも、人の内なる脈うつ力を、自らが在るのを汲むのと同じ器で、両手で清水を汲むように、汲み取るからではないでしょうか。彼らは見つめ合うことで、互いにその力を汲み取り合い、与え合ってていたのです。

まるで、遺伝子の二重螺旋が、共に手を取り合い、回りながら昇化していくように!それを為す人には、もはや言葉はいらず、ただ瞳と瞳を結ぶだけでよかったのです。


人が大きな窓から、その朝(あした)初めての富士を見ます。その時、見る人はどなたも、見たとは言わないでしょう。ただ見ただけなら、寝ぼけた夢幻も見るのです。それは、今まさに人と富士が‘出会った’としか言いようのないなにものかです。

そして、瞳から瞳へ流れるように富士の存在が放つエネルギーをいただく事になるでしょう。私たちはその力にに共振し、命が高まるのを感じます。

たぶん、私たちはそのような共振関係で、人や世界と結ばれ、また結びかえすのではないでしょうか。南イタリアの小村の村人達は、何千年何万年そのようにして、互いの生きてることを言祝いでいたのです。



     …‥‥・つづく・‥‥…
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